今回おすすめするギタリストはヨーロッパを代表するジャズ・ギタリスト、ルネ・トーマ(Rene Thomas) です。
ベルギー出身のトーマは母国で40年代からジャズ・ギタリストとして活動をはじめ、50年代にフランスに渡り、同じくベルギー出身のボビー・ジャスパー(Ts/Fl)等とパリで活動、50年代後半にはカナダのモントリオールに移住し、カナダのみならず、アメリカでも活躍します。
ニューヨークのジャズ・シーンでもトーマのギターは注目されたようで、秋吉敏子(P)の「International Jazz Sextet(ボビー・ジャスパー、ナット・アダレイも参加)」、ソニー・ロリンズの「Big Brass」等のアルバムに参加する他(この時期ロリンズに「どのアメリカ人ギタリストより良い」と言わしめた)、1960年には、自身にとっての代表作といえるリーダーアルバム、「Guitar Groove」を吹き込みます。
1963年にはヨーロッパに戻り、ボビー・ジャスパーとのクインテットやエディ・ルイス(Org)、ケニー・クラーク(Dr)とのトリオで活動、様々な大物アーティストとも多数共演しますが、1975年に47歳の若さで心臓発作によりこの世を去っています。
トーマのプレイの特徴はジミー・レイニーに強く影響された正確なピッキングによるクールなフレージングと、アメリカのハード・バップ・シーンに感化されたであろうグルーブ感の絶妙なバランスにあると思います。
ジミー・レイニーにハード・バップ・テイストが加わった感じ(?)とでも言えばいいでしょうか。
未発表のライブ録音を集めたCD「Guitar genius vol.2」でジミー・レイニーの“Motion”という曲を演奏しているのですが、トーマはテーマの後にまず原曲(スタン・ゲッツとの共演盤)でレイニーが弾いたソロを完コピで弾き、それから自分のアドリブをとっています。それを聴くとレイニーのスタイルを徹底的に研究したことがうかがえます。
トーマのアルバムで最もおすすめなのはもちろん上記の「Guitar Groove」ですが、他にもすばらしい演奏が聴けるアルバムが現在はCDで多数入手可能です。
まずは帰欧してから盟友ボビー・ジャスパーと組んで録音した「Thomas-Jasper quintet」('61)、ジャスパー等とともにチェット・ベイカー(Tp)と共演した「Chet is back!」('62)はバップ・ナンバーやスタンダードが多数演奏されており、楽しく聴けるアルバムです。
トーマの、ギター側のトーン・コントロールを絞らないブライトでアタックの強い音色(グラント・グリーンの音色に似たところもある)はオルガンに良く合うため、オルガン奏者のサイドマンとしての録音もいくつかあります。
パリで活動していたアメリカ人オルガン奏者、ルー・ベネットの「enfin!」('63)では、コルトレーンの“moment's notice”オーネット・コールマンの“Jane”なども演奏しています。
特に“monent's~”のギターソロは必聴です。
トーマのリーダー作「meeting Mr Thomas」('63)でもベネットと共演しています。
最近CD化された、ドイツ人オルガン奏者イングリッド・ホフマンの「Hoffman's hammond tales」('63)は全体的にポップな作品ですが、トーマのギターは絶好調です。
しかしトーマとオルガン奏者の共演といえばやはりフランスのエディ・ルイスとの作品が一番聴き応えがあるでしょう。
ルイス、トーマ、ケニー・クラーク(Ds)による「Eddy Louiss trio」('70)ではエヴァンス=マイルスの“Nardis”、ホレス・シルヴァーの“No Smoking”も取り上げています。
この時期あたりからトーマはモード・ジャズ的なアプローチを自己のプレイに取り入れ始め、ソロにメカニックな要素が増えていきます。
エディ・ルイスとはスタン・ゲッツ(Ts)のサポートも行っており、ライブ・アルバム「Dynasty」('71)でその演奏が聴けます。
70年代以降のトーマは、ギターでコルトレーン以降の、モード・スタイルのサックス・プレイヤーのようなプレイを目指していたらしく、ギターの音をアンプで軽く歪ませたり、コンプレッサーをかけて音を伸ばしたりといったアプローチを試みています。
死後に発表された最晩年のライブ、「hommage a...Rene Thomas」では、アップテンポのモーダルな自作曲、ジョージ・ケイブルス(P)作曲の“(Lord)Jesus think of me”(スティーブ・グロスマン(Ts)も取り上げた)等の意欲的なナンバーを演奏しており、トーマが最後まで音楽的に前進し続けていたことがこの作品からも解ります。
最近はYOUTUBEでもトーマの映像を観ることができますので、ぜひご覧になってみてください。